2007年12月11日火曜日

十八史略の人物学(伊藤肇著)からの引用

  37 辛相の条件 エリートの人間学より

 人を組織し、党をつくり、企業を運営し、自ら、権力をふるって、これを自他のために役立てる。これが政治であり、経営である。だが、権力くらい、人を堕落させるものはない。権力支配には名聞利達を伴い、道徳腐敗を生じやすいのだ。(中略)知識はいかに精緻なものであっても、それは断片的なことを記憶しているというだけの単なる大脳の働きにすぎないし、知識だけは行動力とはならない。ところが、その人間の精神活動に理想が生まれてくると、つまり志をもつようになると、それが知識と結びついて、道徳的、心理的判断ができるようになる。それを見識という。したがって、見識は、人から借りることもできないし、つけ焼刃などもきくものではない。自分自身の修行以外に、見識を身につけることは不可能なのだ。しかし、この見識をもってしても、現実に事を処し、進めていくことになると、なかなか容易なことではない。さまざまな利害や矛盾、また、そこから発生する議論の中にあって、それらを抑え込んで実践しなければならない決断力が必要になってくる。つまり、見識にこの決断力を伴ったものがたん識である。

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