2012年4月19日木曜日

岩手県出身の小沢一郎が語る新しい街つくり

戊辰戦争終結以来、東北地方は産業や教育・医療のインフラが西日本に比べて乏しい。そこを、今回の大震災が襲った。田中角栄の秘蔵っ子であった小沢一郎は、平成23年7月28日の自由報道協会主催の記者会見で、中長期的な復旧・復興を目指す東北地方の姿は、どのようにあるべきかについて語った。「当面の震災復興ということに限ればね、沿岸の街つくりをどうするか。僕の岩手でも2か所かな。明治かなんかの津波で全部、そのとき村長さんが住宅を高台に移したと。そこはまったく、ほとんど被害がないんですね。ですから、先人のやったそういうことも念頭に置きながら、新しい街つくりをしていくっちゅう事だろうと思います。それから、東北だけでなく、地域は同じことですけど、国土の平均的な発展を図っていくにはどうしたらいいかということ。その一つが地方分権、地域主体です。本当に地方が自立できる制度にすること。会社でもなんでも、なぜ東京に集まるのか。東京に来ないと、仕事にならないからです。最終的に霞が関のはんこをもらわないと、何もできないんですから。それを、地方でもできるようにすりゃあいい。簡単なんです。欧米では、世界的な大企業が地方に本社置いている。それで用が足りるから。地方は人柄も純朴で、土地や賃金も安いかもしれない。企業の進出の条件は非常に良い。根本を変える必要がある。当面、企業が行ったところに優先的に税金をまけるとか、そういうちっちゃな話じゃ駄目です。制度そのものを変えることで、全国が平均的な発展を期す。これが僕の基本的な考えです。

2012年4月8日日曜日

権力欲が権力を手にした時

今日の日本を支配しているのは、自民党でも民主党でもなく、この「敗戦後体制」なのです。マルクス主義者や左翼反体制派が喜びそうな言い方をすれば、戦後日本の「支配権力」は、国家でもなく、自民党でもなく、官僚でもなく、「敗戦後体制」そのものなのです。そして実は、もっと大事なことに、この「支配権力」は、我々の外にあって我々を支配しているのではなく、われわれ自身のうちにあるのです。「支配権力」は反体制左翼の妄想の中にあるのではなく、われわれの「精神」の内に住み着いている。それこそ大衆の中に巣くっているのです。戦後憲法、アメリカへの依存と中国への卑屈さや尊大さ、経済的利益中心の発想、そして歴史観や戦後的価値、これらはすべてわれわれの精神にかかわる問題です。「支配権力」はわれわれの内部に巣くっているのです。そこまで踏み込まなければ、今日の日本の「全般的衰退」は食い止められません。民主党が従来の自民党路線を改め、政策転換を行うというのならば、この「敗戦後体制「」まで踏み込まなければなりません。民主党が本当に「反権力」であり、本当に「反体制的」であるなら、対抗すべきはこの「敗戦後体制」だったのです。 しかしむろん彼らにはそんな問題意識はは全くない。それどころか、民主党自体が、(そのネーミングがアメリカの民主党を思わせるように)戦後民主主義という「敗戦後体制」そのものの落とし子だった。これでは、政権交代の意味は何の意味もないでしょう。

脱原発は、脱成長路線     佐伯啓思

「原発」をかりに現代の技術文明の象徴だとすれば、脱原発は、この技術文明そのものをどう考えるか、もっと言えば、技術文明に依存したわれわれの「幸福」をどう考えるのか、という問題へつながってくるからです。まずはっきりしていることは次のようなことでしょう。今ここで脱原発へむかったとしましょう。これは、長期にわたって電力使用レベルをおとすことであり、電力料金の値上げを容認することです。それは企業からすればコスト上昇によって国際競争力を失うことを意味し、消費者にとっては生活レベルを低下させることを意味する、ということです。太陽光などの代替エネルギーへの転換は急速にはできません。中国は今後も原発開発を推進するでしょうし、アメリカもそうでしょう。フランスは電力の80%を原発でまかなっていますし、これからでてくる新興国はこぞって原発依存になってくるでしょう。その中で日本は、高コストの電力によってグローバル競争をしなければならない。これは大変な不利な立場に置かれるのです。しかも火力への逆転は中東への原油依存をさらに高め、エネルギー自給の点でもますます不利になります。世界中が原発の方向を向いたのは、結局のところ、グローバルな市場競争のなかでは、出来るだけ低コストで豊かな電力供給を自給することが不可欠だとみなされたからです。この厳しい資源獲得競争のなかでは、化石燃料への依存はあまりに高コストだとみなされたのです。端的に言えば、グローバルな市場競争のさなかで経済成長を追求しようとすれば、出来るだけ資源制約の少ない安定したエネルギー供給が不可欠だったのです。こうして世界中の国がリスクを承知で原発のほうを向き始めた。