2008年6月8日日曜日

ルポ 貧国大国アメリカ (堤 美果著からの引用)

     あとがき より

 実はすべてを変えたのはテロそのものではなく、「テロとの戦い」というキーワードのもとに一気に推し進められた「新自由主義政策」の方だった。何故ならあの言葉がメディアに現れてから、瞬く間に国民の個人情報は政府に握られ、いのちや安全、国民の暮らしにかかわる国の中枢機能は民営化され、競争に負け転がり落ちていった者たちを守るはずの社会保障費は削減されていったのだから。 今起きていることは、あのテロをきっかけに一つの国が突入した「報復戦争」という構図ではなく、もっとずっと大規模な、世界各地で起きている流れの一環であることを。「民営化された戦争」という国家レベルの貧困ビジネスと、それをまわしてゆくために社会の底辺に落とされた人間が大量に消費されるという恐ろしい仕組みについて。 それがアメリカとイラクという二国をはるかに超えた世界規模の図式であることを証明するかのように、日本もアメリカの後を追うようにしてさまざまなものが民営化され、社会保障費が削減され、ワーキング・プアと呼ばれる人々や、生活保護を受けられないもの、医療保険を持たないものなどが急増し始めた。アメリカで私が取材した高校生たちがかけられたのと同じ勧誘文句で、自衛隊が高校生たちをリクルートしているという話が日本各地から私の元に届き始めたのは最近だが、同時にアメリカ国内では、この流れに気がついた人たちが立ち上がり始めていた。

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