2008年2月9日土曜日

経済学的思考のセンス(大竹文雄著)からの引用

      Ⅰ イイ男は結婚しているのか?   非金銭的インセンティブ より

 環境問題においては、二酸化炭素の発生を抑えるために、環境教育や規制に頼ろうとすることが多い。経済学者は、炭素税を課すことや排出権取引によって解決することを好む。それは、人々が金銭的なインセンティブによって行動を変えることを重視しているからである。もちろん、環境を大事にすべきだという非金銭的な価値観を、教育によって人々に持たせることが簡単であれば、そのほうが効率性が高くなる。しかし、人々にの価値観や倫理観を変えることは簡単ではない。教育を受けている過程にある子供には、教育を通じて価値観や倫理観に影響を与え、倫理的なインセンティブで環境問題解決のために行動するようにしむけることは可能だろう。しかし、環境よりも快適さを重視する価値観や倫理観をすでに形成してしまった大人に対して、環境教育を行っても効果は限られたものにしかならないのではないか。その意味で、経済学者は人々の価値観を変えるよりも、金銭的インセンティブによって人々の行動を変えるほうが確実だと考えている。

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